感染症フェロー便り[13]
―抗菌薬使用のピットフォール⑤―予期せぬ出来事
松永 直久
1
1UCLA Affiliated Program in Infectious Diseases
pp.534-536
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101152
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症例
25歳の女性.Goodpasture症候群による腎不全により血液透析を受けており,C型肝炎の既往がある.気管支肺炎のために入院.電解質と肝機能は正常.心電図は洞性頻脈以外は正常,心エコーでは左室軽度拡大,左室駆出率40%であった.セフタジジム,アミカシン,クラリスロマイシンが開始された.入院7日目,心電図モニターに異常が認められた1).
(Am J Med 104 : 395-396, 1998より一部改変)
この症例のポイントは2点あります.①抗菌薬の選択は理にかなっているか,②どんな心電図異常が起きたのか.
症例では3種類の抗菌薬が使われていますが,肺炎に対してこの組み合わせでいいでしょうか.セフタジジム,アミカシンは緑膿菌も含めたグラム陰性桿菌をよくカバーしますが,多剤耐性が疑われる重症例でなければ2剤は必要ないでしょう.ただ,セフタジジムはグラム陽性菌である肺炎球菌への効力は弱いです.クラリスロマイシンは非定型肺炎をカバーし,肺炎球菌もカバーします.しかし,本邦ではマクロライド耐性の肺炎球菌が問題となっています.さらに,入院が必要なほどの肺炎球菌による肺炎をカバーするには,静菌性のマクロライド系よりも殺菌性のβラクタム系やニューキノロン系を使いたいところです.緑膿菌と肺炎球菌両方をカバーするセフェピムと非定型肺炎をカバーするクラリスロマイシンという組み合わせのほうが理にかなっています.
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