メディカルエッセイ
予期せぬ出来事
堀内 和孝
1
1日本医科大学泌尿器科
pp.284
発行日 1998年3月30日
Published Date 1998/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902306
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入局して最初の手術が膀胱全摘除術であった。そのときから,私と膀胱全摘除術の付き合いは始まった。9時からの執刀であったが,1年生なので8時過ぎに手術室に入った。その後,わけのわからないうち12時間が経過し,手術室を出たのは夜の8時だった。「泌尿器科はこんな長い手術ばかりなのか? とんでもない科に入局してしまった」と後悔したことを覚えている。
月日が経ち,オペレーターとして膀胱全摘除術を行い始めたころは,先輩の指導者から「尿路変向を除いた膀胱全摘除術のみを2時間以内に終われば超一流,3時間以内ならば一流」といわれた。そこで,根性を入れて3時間以内で手術を終わらせ「今日は早い!」と喜んだこともあった。しかし,思わぬことで4時間以上かかり,尿路変向術後には"ぐったり"ということもしばしばあった。しかし,教育機関という大学病院の性質上,自分がオペレーターをすることはきわめて稀となった。指導しながら行うとどうしても時間がかかるが,自分も先輩に手取り足取り教えてもらったので,それも仕方がない。きばらず,時間を気にせず,慎重に,出血が少なく無事に終われば良しとしている。
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