特集 FGFシグナルの新たな制御機構:新規な活性調節分子の発見と関連疾患治療の最先端
せるてく・あらかると
予期しなかった出来事
下郡 智美
1
1理化学研究所 脳科学総合研究センター 視床発生研究チーム チームリーダー
pp.432-433
発行日 2012年3月22日
Published Date 2012/3/22
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癌細胞内で特定のタンパク質合成開始がポリアミンにより促進されるメカニズムを研究していた大学院時代は,脳の発生の研究を将来自分がすることになるとは思っていなかった.事の始まりは,博士課程2年のときにアフリカツメガエルを研究室で使うので,動物施設を作れという教授の言葉からだった.当時はグルタミン酸受容体の1つであるNMDA受容体にポリアミンが結合してゲーティングを促進させることが報告された後であり,その結合サイトを同定するべくミューテーションを加えたNMDA受容体のmRNAをアフリカツメガエルの卵にインジェクションし,タンパク質を発現させてボルテージクランプ(電位固定)を行う目的だったのである.私のテーマとはあまり関係なかったのだが,様々な理由から大役を仰せつかり,両生類,爬虫類が嫌いなことはそのときは忘れてカエルの世話を始めたのである(しかし,今も嫌いである).実験には卵しか使わないので当然メスしかいらないのだが,勝手にオスを購入して人工授精をさせて動物極が上にひっくり返るのを楽しんでいたりした.このあたりから,普段細胞培養では見られない発生のダイナミックな変化が面白く感じられるようになり,ぼんやり留学先は発生にしようと思い始めていた.
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