感染症フェロー便り[12]
―抗菌薬使用のピットフォール④―これって抗菌薬のせい?
松永 直久
1
1UCLA Affiliated Program in Infectious Diseases
pp.440-441
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100947
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症例
72歳,高血圧,心房細動,脳梗塞の既往があり長期療養型病院に入院中の男性.数日前に咳嗽,喀痰を自覚するまでは,とくにかぜ様症状などはなかった.その後38.7℃の発熱,頻呼吸などの症状が出現したため,救急車で搬送されてきた.血圧120/60 mmHg,脈拍100/分,呼吸数24/分,酸素飽和度93%room air.白血球数14,000/μl,ヘモグロビン,血小板,クレアチニンは正常範囲内.PT-INR 2.2であった.喀痰のグラム染色で多数の白血球とグラム陰性桿菌(1+)を認めた.胸部X線上で右下肺野に浸潤影が認められた.ピペラシリン/タゾバクタムが開始され,そのまま入院となった.その後,喀痰培養,血液培養でも菌は同定できず,同じ抗菌薬が投与され,解熱,呼吸数正常化を認めた.入院7日目,血尿が認められた.
院内発症の肺炎ですが,主治医はターゲットとして緑膿菌も含めたグラム陰性桿菌,肺炎球菌,嫌気性菌を考えていました.MRSAやレジオネラなどの非定型肺炎は,搬送元の長期療養型病院の患者では少ないことから,ターゲットから外したようです.その結果,empiricな抗菌薬としてピペラシリン/タゾバクタムが選ばれていました.
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