感染症フェロー便り[9]
―抗菌薬使用のピットフォール①―「とりあえず」といわれても…
松永 直久
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1UCLA Affiliated Program in Infectious Diseases
pp.156-160
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100825
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「とりあえず抗菌薬出しといて」
臨床の現場でよく聞かれる言葉かもしれません.しかし,「とりあえず」で出せるような抗菌薬とはどんなものでしょうか? カルバペネム系などのいわゆる広域抗菌薬でしょうか? 確かに,「広域」と名が付いています.しかし,どの方向に広くなっているのかを理解していないと痛い目に遭います.「広域」といえどももともとカバーしない菌もあり,広域抗菌薬に対する耐性を獲得している菌もあります.抗菌薬を使う際には,考えられる起因菌(ターゲット),抗菌薬がカバーできる菌,この両者をしっかり意識する必要があります.それらを考えずに「とりあえず」抗菌薬を出しても全く効かない可能性があります.→(A)
では,ターゲットをカバーしていればそれでいいのでしょうか? もちろんそういう訳にはいきません.投与しようとしている抗菌薬が起こしうる副作用に,患者さんが耐えうるかも考えておかなければいけません.→(B)
上記のハードルをクリアして適正な抗菌薬を投与できたとします.患者さんも抗菌薬に反応して,状態がよくなってきました.しかし,ここで安心することはできません.抗菌薬によって排除されなかった菌が優位になることで,新たな問題が起こり得ます(菌交代現象).→(C)
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