患者の論理・医者の論理11
病いのナラティブ―医療者の役割とは
宮田 靖志
1
,
山本 和利
2
1札幌厚生北野病院
2札幌医科大学医学部地域医療総合医学講座
pp.168-172
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101108
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Case
44歳女性.「貧血」なので貯蔵鉄の検査をしてほしいとのことで来診.若い頃から赤血球の比重不足で献血ができなかった.5年前,月1回の頻度で3カ月間に38℃台の発熱や手指の関節痛が出現したため,Aクリニックを受診し,抗核抗体320倍を認めた.膠原病の専門医を紹介され受診したが,とくに心配ないといわれた.その時にヘモグロビン,血清鉄は正常であったが,フェリチンが4 ng/ml(基準値5~157)と低値であることを指摘され,鉄剤を半年に1回のペースでもらいに行くことになった.昨年5月,「脳貧血」で動けなくなりAクリニックを受診したところ,血液検査で貧血を認め鉄剤を8月まで内服した.もともと生理の出血は少し多いように思っていた.11月になり,体が「こわい」ので再びAクリニックを受診した.血液検査ではヘモグロビンは正常だったが,フェリチンが低値であることが体が「こわい」ことの原因ではないかと思い,主治医にフェリチンの検査と鉄剤の処方を依頼したところ,「貧血はありません.そんなに貧血が心配なら子宮を取ってしまってはどうですか.鉄は飲みすぎると脳軟化症になりますよ」といわれた.Aクリニックにはもう絶対に行くまいと決め,B婦人科を受診し,鉄剤の処方とフェリチンの検査を依頼したが,やはり検査をしてもらえなかった.体が「こわい」のはなぜだろうかと医師に問うと,それには答えてもらえず,「いろいろ考えるから神経症になるのです.体がこわいのは内科で診てもらいなさい」といわれた.当院を受診した患者は,「私はフェリチンが減っているので体がこわいのです」と声を震わせながら訴えた.
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