EBM時代の生薬・方剤の使い方 [第2回・生薬編]
附子と痛み
滝 昌則
1
1(株)ツムラ研究本部製剤品質研究所
pp.160-162
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101106
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附子はキンポウゲ科トリカブト属植物の塊根から調製され,鎮痛,新陳代謝の賦活,利尿および強心などの作用を生かし,八味地黄丸,桂枝加朮附湯,真武湯,大防風湯,牛車腎気丸,麻黄附子細辛湯などの漢方処方に配合される重要な生薬である.トリカブト属植物に含有されるアコニチン系ジエステルアルカロイド(メサコニチン,ヒパコニチン,アコニチンなど)は,強力な鎮痛作用を有する反面,毒性が強く,古来より特色のある減毒処理が行われてきた.中国では塩附子,炮附子,黒附片,白附片,黄附片などに調製され,本邦においては江戸時代に白河附子などが用いられてきた.伝統的手法によって調製されたこれら生薬の多くは,製法の詳細が不明であり,品質の均一性に問題を抱えながらも,経験的判断に基づき使用されてきた.
しかし近年になって,オートクレーブ(湿熱処理)による安定した製造技術の確立とHPLC(高圧液体クロマトグラフィ)を利用した高度な分析技術の導入により,加工ブシおよび修治ブシが開発され,漢方処方の配合生薬および生薬製剤として安全な利用が可能となった.とくに微量のジエステルアルカロイドを厳密に管理した生薬製剤の加工ブシ末および修治ブシ末は,鎮痛効果に優れ,漢方処方との併用によって各種の痛みを改善することが報告されている.今後も疼痛治療を中心とする臨床のさまざまな場面にこれら製剤の積極的な活用が期待されていることから,今回は多くの附子製剤のなかでも品質および薬理効果・安全性が科学的に評価されている修治ブシ末N(TJ-3022)を中心に紹介する1, 2).
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