ギアチェンジ―緩和医療を学ぶ・2
進行癌患者に「死にたい」といわれた時―希死念慮をもった患者をいかに支えるか
池永 昌之
1
1淀川キリスト教病院ホスピス
pp.156-159
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101105
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Case
47歳,女性.8年前に乳癌と診断され,乳房切除術を受けた.しかし,半年前,下部胸椎に骨転移と広範な肝転移が指摘され,胸椎には放射線療法が施行された.しかし,両下肢の麻痺は次第に進行し,1カ月前からは完全麻痺となっている.肝機能障害から生命予後は2~3カ月と考えられている.本人には「乳癌の骨転移が神経を圧迫して麻痺が出てきている.麻痺はおそらく良くはならないだろう」と伝えられている.ベッド上の生活が続いており,尿道カテーテルが入っている.自力座位はとれるが,車椅子には大人2人の介助がないと移れない.
家族は,50歳になる会社員の夫と,23歳(社会人)と21歳(大学生)の息子がいる.3人とも献身的で,仕事の合間をぬって病室を訪問している.しかし,本人は家族が面会にやってきても「仕事も忙しいのだし,あまり来なくてもよい」といってすぐに追い返してしまう.もともとは社交的な人物であったが,今回の入院からは人が変わったようになり,あまり友達にも会いたがらないと夫はいっている.
ある日,病室に訪問した時にBさんは「こんな体になって.みんなに世話にならないと生きていけなくなって.家族に迷惑をかけるぐらいなら,生きていても仕方がない.いっそのこと早く死にたい」と訴えた.
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