再評価後の漢方治療入門―もう一度随証治療・4
葛根湯と麻黄附子細辛湯(その2)
坂口 佳司
1
1坂口循環器科内科医院
pp.359-362
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902713
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葛根湯と麻黄附子細辛湯(続)
■麻黄附子細辛湯
「君,風邪をひいたね」「ええ,しかし,もう大丈夫なんです.昨日はのどが痛んで,咳がでて,気分が悪かったんですが,薬飲んで半日静かにしていたら,今日はもうほとんど何でもなくなってしまったんです」「ふーん,何を飲んだの」「麻黄附子細辛湯のエキスを飲んだんです.この頃みなさんが,これを飲んで治ったといっていたもんですから」.この会話を読まれた皆さんは,おそらくあっとばかりに驚かれたことだろう.18歳のぴんぴんした娘っこが,こともあろうに麻黄附子細辛湯を飲むなんて,と.
以上のような書き出しで,藤平1)はその著書の中に,麻黄附子細辛湯を取り上げて詳しく述べている.実際,葛根湯に比べて麻黄附子細辛湯の名は一般的ではない.麻黄附子細辛湯は今までのところ,「老人や虚弱者のかぜ」に対して使用すると,対象が限定されているように考えられる.しかし,上記の文章のように,実際にその効果を味わった人には,老若男女を問わず,その切れの良さから好まれる処方のようである.教科書的には使い道が限られているにもかかわらず,現実には広く使われる可能性を秘め,かぜ症候群に使用する漢方処方の中でも特異な存在であり,「隠された処方」といってもよい麻黄附子細辛湯について,今回は取り上げてみることにする.
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