第Ⅳ章 各論:がん患者へのケアとエビデンス 症状マネジメントとケアのエビデンス
痛み
三次 真理
1
1武蔵野大学看護学部
pp.173-178
発行日 2019年2月25日
Published Date 2019/2/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_173
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がん患者に出現する痛みとは
痛みは,がん患者のうち3分の1,進行がん患者では3分の2が体験し,患者にとってもっとも苦痛な症状であるといわれている1).がんの痛みは,出現する部位や広がりによって多種多様な性質があり,長期間にわたって継続するため,患者の心理状態にも日常生活にも大きな影響を及ぼす.痛みによって主体的な活動が制限され,社会生活にも変調が及ぶなど,身体的な問題にとどまらず,日々の暮らしや人間関係にも大きな影響を与えることはいうまでもない2).ひいては,生きる意味や価値を問いながら生きる全人的な存在としての苦痛にまで波及し,QOLを低下させていく.がん患者に出現する痛みとは,これらのすべてが複雑に絡み合って形成される痛みであり,「トータルペイン(全人的苦痛)」3)の概念は,このことを意味している.
看護師が目指すがん患者の痛みのケアは,まさにこの「全人的苦痛からの解放」であり,身体の痛みに焦点をあてた疼痛マネジメントを包含し,それを越えて,全体論的な視点からがん患者に出現する痛みのケアを探究することが求められる.
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