総合外来
外傷のない「交通事故死」の診断―さらなる精査が必要か?
石川 雅彦
1
,
前沢 政次
2
Masahiko Ishikawa
1
,
Masaji Maezawa
2
1国立保健医療科学院政策科学部
2北海道大学病院総合診療部
pp.964-966
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101064
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CPAOA(cardio pulmonary arrest on arrival)にて搬入される救急患者の初期診療は,第一線のプライマリ・ケア医にとって重要かつ危急の問題であるが,治療の甲斐なく患者が救命されなかった場合,その死因に関しては,得られた診療情報が少ないために死亡診断書の作成に難渋することも少なくない.
症例呈示
患者:73歳,男性.
現病歴:1月初旬,比較的交通量の多い道路の路肩に,オートバイから転倒しているところを発見され,救急車にてベッド数約200の救急指定民間病院に搬入された.搬入時,呼吸停止,心停止.ただちに気管内挿管,心臓マッサージ,血管確保による薬剤治療を継続するも,心拍・自発呼吸再開せず,搬入約1.5時間後に死亡を確認した.
搬入時の血液検査では,白血球数4,900/μl,赤血球数336×104/μl,Hb11.6g/dl,血小板数14.3×104/μl.死後の身体所見では頭部・体表面に外傷はなく,明らかな骨折・皮下出血を認めず,死因の特定ができなかった.
このため,さらなる検査としてCT検査を施行した.頭部CT検査では脳出血や頭蓋骨骨折はなく,腹部CT検査では最大径約5cmの腹部大動脈瘤を認めたが破裂はなく,胸部CT検査(図1)では血気胸や胸水を認めず,肺挫傷・心肥大も著明でなかった.
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