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Case
39歳,男性.システムエンジニア.3日前より,後頭部から頸部にかけての重苦しい頭痛を自覚.昼食時,上司に「最近肩こりと頭痛がある」と何気なく話したところ,「かくれ脳梗塞というものがあるから,MRI検査をしてもらったほうがよい」と勧められた.自身も最近「MRIでようやく診断がついた脳腫瘍」の新聞記事を読んでいたため心配になり,翌日午前は休みをとって地域の公立総合病院を受診した.
外来担当医は病状を詳細に尋ね,丁寧に診察を行ったのち,「首や肩の筋肉の緊張によって生じた頭痛の可能性が一番高そうです.生活上の注意と1種類のお薬でしばらく様子をみてください」と説明をした.おそるおそる「本日MRIはできないのでしょうか」と聞くと,医師は「症状は軽いですし,現時点で脳梗塞の可能性はきわめて少ないので,MRI検査をすぐに行う必要はないと思います.しばらく様子をみて頭痛に改善がみられなければ,その時にまたご相談しましょう」とのことであった.AさんはMRI検査を本日受けることができなかったことに不満が残ったが,とりあえず出勤することにした.
乗換駅で電車を待っていたところ,最近開院した神経内科専門クリニックの看板が目に入った.携帯でホームページを見たところ,個人経営のクリニックだがMRIを設置しており,「かくれ脳梗塞の診断に力を入れている」と書いてあった.まだ予定の出勤時間まで少し余裕があったために,やはり検査をしてもらおうと思い,途中下車してクリニックへ向かった.受付で相談したところ,問診票の記入と簡単な診察のあと,すぐにMRI検査が行われることになった.診察時に医師から「血管も危ないから」といわれ,頸動脈の超音波検査と胸部・腹部X線写真撮影,血液・尿検査が合わせて行われた.検査後,院長から「検査結果に異常はなかったが,年齢の割には動脈硬化が強く,血の巡りが悪くておきた頭痛だろう」との説明があり,非ステロイド系鎮痛薬,筋弛緩薬,脳血流改善薬,精神安定薬,プロトンポンプ阻害薬,胃粘膜保護薬が処方された.帰り際に,「しばらくしてからもう一度MRIと血液の検査をしましょう」と説明され,1カ月後の診療予約をとってクリニックを後にした.Aさんは,ちょっと薬や検査が多いかなと思いながらも,いろいろ調べてくれた後者のクリニックにはよい印象をもった.
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