EBM時代の生薬・方剤の使い方 [第10回・生薬編]
人参とストレス
齋藤 洋
1
Hiroshi Saitou
1
1武蔵野大学薬学部
pp.890-893
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101046
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薬用人参は約2000年前から,中国を中心として朝鮮・日本で,貴重な上薬として使用されているが,1960年頃から世界的に関心が高まり,薬用人参の成分,薬理作用,臨床効果が研究され,古くから伝えられていた薬効を裏付けた報告や新しい薬効の報告が数多くなされ,今や世界中で使用されている.しかし,人参の薬効は全く解明されていないといってもいいすぎではない.「その理由は何故だろうか」.
薬用人参は中薬では補薬に分類され,そのなかで補気薬に入れられている.補薬は主として虚症,すなわち正常な生命活動や生体の機能が低下した時,疾病や創傷の回復力が弱い時に使用される.補気薬は低下した各器官の生理機能を促進し,体力を増強する薬である.とくに消化器系や呼吸器系の機能の衰えを防ぐ.たとえば食欲不振,四肢の無力感,全身の倦怠感,筋の緊張不足の時に使用する.これらの症状はいろいろな原因で起こるし,同時に発現するとは限らないので,発現した症状により使う補気薬や処方を考えなくてはならない.すなわち,補薬は経験から生まれた分類で,近代医学で分類されているどの病名にも使用されていないし,医薬品の分類のどこにも入れることはできない.補薬の存在が東亜医学の特徴の1つであり,「補薬とは」が解明されない限り,人参の薬効も解明されない.また人参の薬効がわかれば,おのずと「補薬とは」もわかると思われる.
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