特集 顔の総合診療 顔をみればわかること
【知っておきたい顔面疾患とその対応】
顔面神経麻痺・眼瞼下垂
前田 耕司
1
,
梶 龍兒
1
1徳島大学神経内科
キーワード:
中枢性麻痺
,
末梢性麻痺
,
しわよせ
,
前頭筋
,
急性発症
,
慢性発症
,
耳痛
,
聴覚過敏
,
味覚異常
,
分泌液の低下
Keyword:
中枢性麻痺
,
末梢性麻痺
,
しわよせ
,
前頭筋
,
急性発症
,
慢性発症
,
耳痛
,
聴覚過敏
,
味覚異常
,
分泌液の低下
pp.210-213
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100861
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Case
ラムゼイハント症候群を呈した1例
患者:40歳,女性.
家族歴:特記事項なし.
現病歴:幼少時に,水痘(みずぼうそう)の既往がある.数日前より右耳が痛むことがあったが,放置していた.2日前より右顔面がうまく表情を作れないことを自覚しはじめ,コップで水を飲むとこぼすようになった.口腔内に発疹も出現し,しばしばめまいや耳鳴りを訴えるようになった.血液検査にて水痘ウイルス抗体の著明な上昇および,筋電図,神経刺激検査にて右顔面神経の障害を認めた.頭部CT,MRI検査では明らかな腫瘍性,血管性病変を認めなかった.抗ウイルス薬の内服を直ちに開始した.2週間後,耳の痛みやめまいはほぼ消失し,顔面表情筋はゆっくり回復してきた.
顔面神経麻痺
顔面神経麻痺は,神経内科領域においてしばしば遭遇する疾患の1つである.顔面神経麻痺は大きく分けて中枢性障害と末梢性障害に分類される.前頭筋や眼輪筋の一部は両側性の支配であり,下顔筋は一側性の支配である.そのため,中枢性障害では顔面上部の筋肉は比較的障害されないことが多く,末梢性障害では一側の顔面筋すべてが麻痺するため,これにより中枢性と末梢性障害を鑑別することができる.
顔面神経は,運動機能として顔面の表情支配,感覚機能として舌前2/3の味覚支配,自律神経機能として涙腺,舌下腺,顎下腺の分泌,さらにはアブミ骨筋などの支配による聴覚過敏の抑制に関与している(図1).一般に中枢性障害ではこれらの機能が一律に障害されるのに対して,末梢性障害の場合,その障害部位によってさまざまな症状の組み合わせが起こる.
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