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Case
1年後に再び現れた顎口虫症の1例
患 者:43歳,男性.
主 訴:眼瞼上部の腫脹.
現病歴:マダガスカルに約1カ月滞在.帰国後,左肩部にかゆみを伴う腫脹が出現.腫脹は4,5日おきに出現と消退を繰り返しながら頸背部,顎部,左頬部,眼瞼部へと移行.受診時,腫脹は前頭部へと移動中であり,エコーにても異物の存在が疑われた.好酸球数7%と軽度上昇以外は異常所見はなかった.患者血清と各種寄生虫抗原との反応では顎口虫抗原と強く反応し,血清学的には顎口虫症が疑われた.メベンダゾールを2クール投与したところ,腫脹は消失した.約1年後,再び前頭部から眼瞼部に移動する腫脹がみられた.患者はその後海外渡航はなく,また,生食は海産魚のみであった.血清学的検査では,前回の抗体価と変わらず高い値を示し,前回の虫体が生存していたものと考えられた.限局性腫脹が出現と消退を繰り返しながら移動するという有棘顎口虫症に特有の臨床症状を呈し,血清学的に顎口虫抗原と強く反応したことから顎口虫症と診断した.
幼虫移行症(larvae migrants)とは,ヒト以外の動物を固有宿主とする寄生虫の感染型が偶然ヒトに感染した場合,幼虫が成虫に発育できないままヒト体内を移行して種々の臨床症状を呈する症候群をいう.人畜共通寄生虫症(J1)の1つとして,ペットブームやグルメブームなどのライフスタイルの変化によって増加傾向にあり,問題になっている.
幼虫移行症には内臓幼虫移行症(visceral larvae migrants)と皮膚幼虫移行症(cutaneous larvae migrants)の2つの型があり,前者はイヌ糸状虫,イヌ・ネコ回虫,アニサキス,広東住血線虫など,後者は顎口虫,旋尾線虫,ブラジル鉤虫などの幼虫によって症状が発現する.
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