特集 いま日常診療で注目すべき原虫症・寄生虫症
条虫症
大西 健児
1
1東京都立墨東病院感染症科
キーワード:
日本海裂頭条虫症
,
無鉤条虫症
,
有鉤条虫症
,
多包虫症
,
有鉤囊虫症
Keyword:
日本海裂頭条虫症
,
無鉤条虫症
,
有鉤条虫症
,
多包虫症
,
有鉤囊虫症
pp.231-233
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100561
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Case
日本海裂頭条虫症の1例
患 者:32歳,日本人男性,会社員.
既往歴:特記事項なし.
家族歴:特記事項なし.
現病歴:魚の刺身が好物で,以前からさまざまな魚を生食していた.6月27日に軽度の下痢とともに1 m前後の虫体を排出した.近医を受診しパモ酸ピランテルを投与された.8月2日にも前回同様の虫体を排出し,8月6日に墨東病院感染症科外来を受診した.
経 過:受診時の便から裂頭条虫卵を検出したことから裂頭条虫症と診断した.8月20日の夜に下剤を経口投与し,8月21日の9時に600 mgのプラジカンテルを経口投与した(体重98 kg).さらに同日の11時に下剤を経口投与したところ,同日の13時に頭節を有する3.5 mの裂頭条虫を排出した.排出した虫体は島根医科大学環境保健医学第2講座で日本海裂頭条虫と同定された.
疫 学
ヒトの条虫症は,成虫が腸管に寄生する成虫感染症と,幼虫が組織や臓器に寄生する幼虫感染症に分けることができる.日本に存在する成虫感染症のうち,全国的に最も頻度の高いものは日本海裂頭条虫症(J1)である.そのほかに無鉤条虫症も比較的出会う頻度の高い疾患である.稀に大複殖門条虫症,マンソン裂頭条虫症,小型条虫症,縮小条虫症,瓜実条虫症,有線条虫症,米子裂頭条虫症,太平洋裂頭条虫症に遭遇するが,その頻度は低い.重要な条虫症である有鉤条虫症に遭遇する可能性も,現在のわが国においては低いと思われる.
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