カラーグラフ 感染症グローバリゼーション・12
最近話題の美食・ゲテモノ食いによる寄生虫症—幼虫移行症—アニサキス亜科幼虫移行症,顎口虫症,旋尾線虫症,マンソン孤虫症について
西山 利正
1,2
1奈良県立医科大学寄生虫学教室
2奈良県海外渡航者健康相談事務局
pp.537-542
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909285
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
寄生蠕虫は,その本来の固有宿主に感染型幼虫や幼虫包蔵卵が感染した場合,宿主体内で成虫となりその生活史を維持することができる.従来わが国で猛威をふるっていた回虫症,鉤虫症,鞭虫症などの古典的消化管寄生虫症などがそれにあたる.これに対し,一部の蠕虫において,本来固有宿主でない宿主に偶発的に寄生した場合,成虫とならずに幼虫の状態で皮下や臓器を移行し,幼虫のままで宿主に寄生することが次第に判明してきた.このような寄生形態を幼虫移行症(Larva migrans)と呼び,現在の寄生虫学において重要な寄生概念の一つとなっている.
幼虫移行症を引き起こす寄生虫としては,線虫類ではイヌ回虫,ネコ回虫,アニサキス亜科寄生虫,広東住血線虫,顎口虫,イヌ糸状虫など,吸虫類では宮崎肺吸虫など,条虫類ではマンソン孤虫,有鉤嚢虫,包虫などが知られている.今回,これらの幼虫移行症を起こす寄生虫のうち,海産魚類から感染する内臓幼虫移行症であるアニサキス亜科幼虫移行症ならびにいわゆるゲテモノ食いにより感染する皮膚幼虫移行症である顎口虫症,旋尾線虫症,マンソン孤虫症について述べることとする.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.