特集 いま日常診療で注目すべき原虫症・寄生虫症
組織内寄生線虫症―アニサキス症
松本 主之
1
1九州大学大学院医学研究院病体機能内科学
キーワード:
線虫症
,
消化管アニサキス症
,
急性腹症
Keyword:
線虫症
,
消化管アニサキス症
,
急性腹症
pp.224-226
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100559
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Case
刺身を食べた翌朝,腹痛と嘔吐が出現した1例
患 者:56歳,男性.
主 訴:腹痛.
既往歴:特記すべき事項なし.
現病歴:前日夜,日本料理店で刺身を摂取した.帰宅後すぐに就寝したが,当日朝6時頃激しい腹痛と嘔吐が出現したため来院した.腹部全体に圧痛を認め,とくに右上腹部では軽い筋性防御を伴っていた.腹部単純X線検査では鏡面形成を伴う小腸ガス像を認め,腹部超音波では右上腹部に著明な腸壁の肥厚像と少量の腹水がみられた.以上より,アニサキス症を疑い,輸液と腹痛に対する対症療法で経過観察したところ,症状は軽快した.第3病日に施行した注腸X線検査で,大腸肝彎曲部に伸展不良と拇指圧痕像がみられ,同部に線状のアニサキス虫体が描出された.
アニサキス症の病態
アニサキス症は,アニサキス亜科に属するAnisakis属とTerranova属の線虫が人体に侵入して引き起こす病態で,1960年に報告された比較的新しい疾患である(J1).Anisakis属線虫の成虫は海産哺乳類を,幼虫は魚類やイカ類を宿主とする.感染した生魚をヒトが経口摂取することで幼虫が人体に侵入しアニサキス症を発症するが,その後幼虫は自然死滅する1).本邦ではAnisakis simplex larvaの感染が多い.
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