特集 在宅ケア体制の推進と家族制度
在宅ケアの技術と役割
黒田 研二
1
Kenji KURODA
1
1大阪大学医学部公衆衛生学
pp.733-737
発行日 1989年11月15日
Published Date 1989/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208052
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■在宅ケアと施設ケア
わが国でも在宅ケアの重要性に対する認識は,近年急速に高まってきた.だが実際に在宅ケアによって支えられている人々はどれ位いるのだろう.まず,国が行った調査をもとに在宅の「寝たきり者」の数をみてみよう.
昭和53年の厚生行政基礎調査では,当時在宅の寝たきり者は全国に38万人,そのうち65歳以上の人は30万2千人いると推計していた.昭和61年にも同様の調査が行われ,その時にはわが国の在宅寝たきり者は35万7千人,うち65歳以上は28万2千人と推計されている(昭和61年国民生活基礎調査第1巻).この二つの調査の結果を比較すると,65歳以上の人口は昭和53年から61年にかけて増大しているにもかかわらず,在宅の寝たきり者数は増加していないどころかむしろ減少しているのである.61年の調査によると「寝たきり者」の主たる介護者は,同居している「配偶者」,「子の配偶者」,「子」の順に多くこれらが80%を占め,ホームヘルパーが主たる介護者である場合は0.6%に過ぎない.
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