特集 プライマリ・ケア医/危機一髪 日常診療で困ったら
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爆発事故に遭遇した!―トリアージと爆創
仲田 和正
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1西伊豆病院整形外科
キーワード:
爆創(blast injury)
,
トリアージ
,
一次爆創
Keyword:
爆創(blast injury)
,
トリアージ
,
一次爆創
pp.405-407
発行日 2006年5月1日
Published Date 2006/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100299
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爆発事故 重傷は後から来る!
爆創は国内の教科書で取り上げられることは皆無である.1980年,筆者がまだ研修医の頃,静岡駅前ゴールデン地下街で大規模なガス爆発事故があった.ビルの窓から降り落ちてきたガラスや道路に散乱するガラス(これを契機にガラス飛散防止フィルムが開発された)で傷ついた軽症の方々が徒歩で最寄りの病院に殺到し,病院外来は大混乱となった.患者の各病院への振り分けもうまくいかず,中心部の2,3の病院に患者が集中したことも混乱に輪をかけた.爆発は土曜日の午前に発生したが,現場から2km弱にあった県立中央病院では全職員を午後まで院内に待機させたものの,来院したのは2,3名の軽症者だけであった.まだトリアージの概念も知られておらず,医師,看護師も軽症者の治療に忙殺され,後から搬入された重傷者の治療が後回しになったため次々と亡くなっていったのである.綿球,ガーゼなどの基本器材は最初に底をついた.「重傷者は後から来る」ことを知ったのはこの時であった.最終的に死者15名,重軽傷者223名の大規模災害となった.
近年,世界各地で爆破テロが相次いでいる.日本もアルカイダの標的になっており,爆破テロが都心部で起こる可能性は十分ある.われわれもただ平和を祈求するのでなく常に最悪の事態に備えねばならない.トリアージ,爆創について学習し,また日頃から地道なトリアージ訓練が必要である.
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