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お気づきと思いますが,本特集は映画007シリーズの第二弾,『007/危機一発』からアイディアをもらっています.いろいろな仕事に追われ,切羽詰まって特集企画を考えていた私に,神の啓示のように頭の中にあのテーマ音楽が浮かび,ふと本企画の原案を思いつきました.その後,多くの皆様のご協力をいただき,この「プライマリ・ケア医/危機一髪」ができあがりました.本特集では,総論として臨床医の視点から「危機一髪」の状況でのアプローチ法を,市立堺病院総合内科の川島篤志先生にご解説いただき,またテキサス大学の青木則明先生には,医療への応用が注目を集めているマネジメント手法,TOC(theory of constraint:制約条件の理論)をご解説いただきました.各論では一般臨床医が診療場面で遭遇する可能性のあるさまざまな「危機一髪!」と思われる事例への対応法をそれぞれの立場よりご解説いただいています.今後読者の皆様が診療現場でこのような事例に出会った時に,この特集がたった一度でもよいので,役に立つことができれば幸いです.
ところで『007/危機一発』というタイトルは,1964年に初公開された時の邦題で,再公開時に『ロシアより愛をこめて』に変更され,以降はすべてこの邦題になっています.原題はFrom Russia with Loveですので,『ロシアより…』のほうが翻訳としては正しいものです.しかし,『007/危機一発』という邦題は,シリーズ最高傑作といわれるこの作品の内容を見事に表していると思います.絶体絶命に追い込まれたショーン・コネリー演ずるジェームズ・ボンドが,ロバート・ショウ演ずる殺し屋グラントとの激しい格闘の末,アタッシュケースから繰り出した秘密兵器を用いて逃れるシーンなどは,まさに「危機一髪」です.ちなみに「危機イッパツ」は本特集タイトルのように「危機一髪」と書くのが正しいのですが,当時の配給会社の担当者があえて「危機一発」という邦題をつけたそうです.
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