メディカルエッセイ
心疾患患者と手術にて思うこと
髙野 照夫
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1日本医科大学附属病院集中治療室第1内科
pp.278
発行日 1998年3月30日
Published Date 1998/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902304
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循環器内科を専門にしていると,外科医から「心疾患のある患者さんに手術をする必要があるが,それに耐え得るか,また術後は集中治療室で管理する必要があるか」という相談を外来で,あるいは個人的に受けることがある。しかも「3日後に手術を行う予定であるので早急な決断が欲しい」という。それが胃や大腸の癌である場合には絶対に手術は避けられない。手術が安全に終了できるかどうか,何を基準に判断するのかが問われることになる。心臓循環器疾患がある場合は,当然,手術は慎重を要する。手術を安全に行うためには,「麻酔科医にすべてを委ねる」という態度ではいけない。
最近では,外科医の多くは修練を積んでいるので,心疾患患者の場合には何を中心に術中・術後管理すべきかを知っていると思う。しかし,心疾患をもつ患者の手術に際して内科医に相談するときには,「外科医として何を求めているか」を明確にして欲しいと考える。また内科医には,手術患者の重要視する所見を把握して,術前に必要な検査と治療を指示し,また術中・術後に予想される問題を指摘することが要求される。さらに,どんな種類の手術の危険度が高いか,危険度が低いかが問題である。前者の手術には大動脈・末梢血管,腹部疾患,整形外科領域のものが挙げられる。その理由は,大動脈・末梢血管の場合は冠動脈疾患の合併症が多いことや出血・血行動態の変化が生じやすいからであり,整形外科疾患では高齢者が多いからである。
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