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学生と患者のはざまにて思うこと
駒松 仁子
1
1国立岡山病院
pp.211-217
発行日 1976年4月25日
Published Date 1976/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906976
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学生との出会い
看護婦になって本当によかったと思います.この心境に達するには10年余の年月が必要でした.これからもいろいろの迷いにぶつかることでしょう.しかし看護という仕事に訣別することはないと思います.臨床実習に来ている学生に‘看護という仕事,好きですか’とよく聞かれます.‘好きよ.でもね2年生のとき荷物をまとめて帰ろうかと思ったこともあったわ’と答えますと,‘そうですかやっぱり’というような表情でうなずきます.このようなとき,学生も私と同じ悩みを体験しているんだなあと思いました.私は今までの体験,色々な人と出会うことの喜び,そして少しでも心豊かな人間に成長しようと,絵画・音楽・本などに親しんだ日々など,ありのままに語ります.だれも同じ悩みにぶつかることを知り,学生は自ら決断を下しながら成長していくことでしょう.
重症患者の看護で疲れ果てて帰宅しても,学生の書いたレポート・実習経験録を読む時は,疲れも忘れて大きな感動に身をまかせているひと時でもあります.学生の目は新鮮で素直です.わたしたち看護婦もこのような目を持ち続けることができたら,どんなにすばらしい看護が実践できることでしょう.大人になっても子供ごころのあどけなさを失わずにいる人は,それだけ物事を見る目にこだわりがないはずです1).こだわりをもたないまなざしは,看護の場においても欠かせないものでしょう.
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