メディカルエッセイ
わが人生での"diversion"
有吉 朝美
1
1福岡大学医学部泌尿器科
pp.138
発行日 1998年3月30日
Published Date 1998/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902280
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昭和30年代後半の九州大学では,膀胱全摘除術後にS状腸を利用した膀胱形成術が精力的に行われていた。だが,適応外の患者には旧式の尿管瘻術が行われ,2本の大きなネラトンカテーテルが挿入された様子を私たちは西部劇の"二丁拳銃"と呼んでいた。術後,尿路感染が必発して発熱に苦しみ,尿管周囲炎の自壊による尿浸潤で激烈なフレグモーネを合併することも稀ではなかった。当時はQOLという言葉も,またそんな概念もない時代であったが,毎日患者に接している主治医としては患者が可哀相でならなかった。「癌が治ったのに贅沢をいうもんじゃない」という時代であったが,このときの印象がその後の私の進路に大きな影響を与えたことは間違いない。
昭和42年秋,国立小倉病院勤務となり,1人ですべての患者を診るようになった。ここでは子宮癌の治療が積極的に行われており,尿路合併症の治療に悩まされることが多かった。念願の2人勤務となったちょうどその頃,少人数の病院でも実施可能な尿管瘻の改良を思い立ち,諸悪の根源であるカテーテルを追放できないものかと考えたのである。
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