病院の広場
わが師
小野田 敏郎
1
1佼成病院
pp.13
発行日 1966年6月1日
Published Date 1966/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202861
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私の中学の校長は名校長と謳われた方である。その中学のまえには朝な夕な仰いだ比高800米の秀峰が聳えていた。校長は,仲秋の夜,全校生徒を率いてこの山へ夜行登山をしようと考えられてこれを職員会議に諮られた。会議では甲論乙駁,大勢は夜行軍は危険であるということに靡いた。そのとき,校長はやわら立って言われた。諸君は夜,かの山に登ってみられたか,私は登ってみた。けっして危険はない--。山頂の大磐石に,高張提灯ふたつをふたりの小使さんに掲げさせて,名月の光のなかに朗々と詩を吟じられたかの先生のお姿は,いまも瞼のなかにある。
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