Coffee Break
ある医師の尊厳死から学ぶ
森岡 政明
pp.135
発行日 1996年3月30日
Published Date 1996/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901742
- 有料閲覧
- 文献概要
高齢化社会と言われ出して久しいが,80歳は言うに及ばず90歳以上の超高齢者を診る機会も多くなった。中でも前立腺癌の増加は統計からのみではなく感覚的にも実感される。PSAによるscreeningが普及した現在では以前に比べて発見時にすでに広範な転移を有する症例は減少してきた。しかし,絶対数ではなく相対的な減少であり,この様な状況下では高齢者に対する手術適応と共にターミナルケアの両者の問題が提起されていると考えられる。我々の施設では75歳を区切りに手術適応を考慮してきたが,実際には高齢でも十分に手術可能な症例が存在することも事実である。一方,広範な転移がみられる症例では,例え一時的に寛解が得られていても短期間であり,疼痛対策や造血機能低下に対する全身管理の必要に迫られる。疼痛対策としては経口あるいは座剤のモルヒネ製剤の使用が可能になり以前に比べ楽になってきた。このような医療側からの対応は種々の文献にも記載されているが,それと共に,あるいはそれ以上に重要なことは看護やmental careに関することである。病名告知の有無,各個入の性格や人生,観社会的地位,家族関係等で各人各様に病気や死に対する対応は異なっている。様々な人生の終末の一部を覗き見る機会を経て,印象に残る患者さんについて少しご紹介したい。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.