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編集後記
小島 祥敬
pp.268
発行日 2020年3月20日
Published Date 2020/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206843
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「あなたの思う福島はどんな福島ですか?」.東日本大震災から5年と1日目の2016年3月12日.福島県は,全国紙の朝刊にこのようなタイトルの一面広告を掲載しました.「福島県という名前を変えないと,復興は難しいのではないかと言う人がいます」から始まるわずか23行の広告文は,私の心を打ち,自然と涙が溢れ出しました.
2018年,雑誌Urologyに「福島第一原発事故以降,停留精巣が日本全国で増加している」という衝撃的な論文が発表されました.著者らは,全く科学的根拠がないにもかかわらず,「原発事故により拡散された放射性物質が主要な原因」と主張しています.この論文は,さまざまな意味で私の心を引き裂くものでした.福島県立医科大学は,総力をあげてこの論文を詳細に検証し,反論論文を発表しました(Fukushima J Med Sci 65, 2019).研究デザイン,結果,考察,結論における“数多く”の問題点を指摘し,論文の不当性を証明しています.震災以降,福島の状況を誤解させるような論文が少なからず発表され,雑誌Scienceでも日本の科学論文に対する信頼は失墜したとの警笛が鳴らされています.根拠のない間違った論文は,風評被害をさらに助長させ,福島の人々の心を踏みにじります.
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