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編集後記
大家 基嗣
pp.78
発行日 2019年1月20日
Published Date 2019/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206473
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本誌2018年4月号の編集後記ではカズオ・イシグロ氏の『遠い山なみの光』で表現されている戦中・戦後を生きた女性の遠い異国への憧れ,7月号では,矢部太郎氏の『大家さんと僕』で87歳の大家さんがマッカーサー元帥に憧れていたこと,10月号では,佐藤愛子センセイの友人の夢はクラーク・ゲーブルとの接吻であることを書きました(『九十歳.何がめでたい』).共通していることはみなぎるパワーと,それとは相容れない現実離れした遠い存在への憧れです.
何不自由なく,むしろ理想的な生活を送っている女性から,「どうして?」と私が感じることがあります.女性は幸せの只中にいても,本当の私はココにいるべきではなく,「いつか王子様が迎えにくる」という妄想をもっている気がするのです.編集後記で取り上げた戦中・戦後を生きた3名の女性はこの感覚の表現形として,あのような発言をしている気がします.一般化すると,「私の居場所はココではない」という感覚です.
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