特集 症状と向き合う漢方の処方─“二刀流”それとも“一刀流”?
企画にあたって
皆川 倫範
1
1信州大学医学部泌尿器科学教室
pp.374-375
発行日 2017年5月20日
Published Date 2017/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206015
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
宮本武蔵の二刀流は「二天一流」と呼ばれる流儀で,右手の大太刀と左手の小太刀で戦う剣道の流派である.他方,日本の医師免許は西洋薬と漢方薬の両方を処方できる“二刀流”ライセンスである.当たり前のようだが,国際的にはそうでもない.中国や台湾では,漢方薬の診療を行うには別の教育を受ける必要があり,それぞれが特化されている.西洋と漢方の“二刀流”診療ができるのは,本邦の特徴であり長所である.
しかし,「日本の医師が皆二刀流で診療しているか?」というとそうでもない.「あの人は漢方が得意だから」といわれる一部の医師だけが“二刀流”なのである.それどころか,あまりに得意すぎると“一刀流”になってしまう.そして,完全にそれぞれの診療体系を尊重した形で“二刀流”を実践すると,多少の無理が生じる.その主たる原因として,処方基準が異なる点が挙げられる.西洋医学では処方基準が診断名にあるのに対し,漢方医学では処方基準が体質と症状にある.それらを別々に取り扱うのが混乱のもとかもしれない.また,「証」や「陰陽」など,不慣れな概念を無理に診療に持ち込もうとするのも問題である.症状はともかく,体質といわれても多くの泌尿器科医には困る話である.もともと,漢方医学は画像診断などがないところから組まれた医療体系で,証や陰陽は処方の打率(奏効率)を上げる1つの工夫である.現在の医療においては,通常の診療である程度の検査をすれば,ある程度の疾患や病態が絞れてしまう.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.