特集 前立腺全摘除術後の合併症―予防と対処
企画にあたって
加藤 晴朗
1
1信州大学医学部泌尿器科教室
pp.195
発行日 2013年3月20日
Published Date 2013/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103040
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一昨年,ベルリンのSIUに参加した際に驚いたことは,前立腺全摘後の合併症のセッションが多く取り上げられていたことである。確かに,人工括約筋やmale slingのキットがすでに市販されているため,メーカー主導のセッションもあったが,それ以外にも,urorectal fistulaや膀胱尿道吻合部の高度の狭窄や閉塞(いわゆるdevastated outlet)の再建について,それらの再建を専門に行っている外科医たちから,それぞれの再建法や成績が討論されていた。頻度的には微々たるものであろうが,本邦でも,現在,ダヴィンチが急速に導入され,前立腺全摘術の件数も急増することが予想される。もちろん,導入時はどこの施設も慎重に行うので合併症は少ないと思われるし,合併症のない手術を目指すことは,われわれの任務でもある。しかし,「合併症のない手術はない」のも事実である。手術件数が多くなれば,当然頻度は少なくなっても数は増えるであろう。それらの対処法を学ぶことは合併症の予防にも通じる。
以前,前立腺全摘後に鼠径ヘルニアの発症が多いと気づいたときには原因がはっきりしなかったが,予防法が考案されるようになり,逆に原因が推測できるようになってきた。また難治性のリンパ漏や囊腫は,特に感染を伴うと厄介で術後管理を悩ましいものとする。拡大郭清も議論されている中,その予防や対処法は必須である。
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