特集 網膜色素変性のアップデート
企画にあたって
中澤 満
1
1弘前大学大学院医学研究科眼科学講座
pp.1437
発行日 2021年11月15日
Published Date 2021/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410214205
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網膜色素変性(RP)に代表される遺伝性網膜変性疾患は,日常臨床において効果的な治療法がなく,しばしば診療に難渋する。さらにiPS細胞による山中伸弥氏のノーベル賞受賞と,iPS細胞が将来的にRPの新しい治療法として期待されるとの報道が,多くの患者に明るい希望を与えることとなった。それはそれで喜ばしいことではあるが,反面,日常の外来診療の場でもiPS細胞を用いた新規治療法の研究と臨床応用に関して多くの患者からさまざまな質問が発せられ,理想と現実のギャップを説明せざるをえない場面に遭遇することも珍しくはないと推察される。
歴史的には1988年にSaikiらが現在も汎用されている耐熱性DNAポリメラーゼをPCRに応用して以来,PCRを用いた遺伝子診断がさまざまな分野で一般化され,医学分野では原因遺伝子検索,細胞死機構の解明,遺伝子治療の開発,ゲノム編集の開発など,今日に至るまで爆発的な進歩を遂げてきている。これは眼科だけにとどまらず,多くの分野でも同時進行で研究が進んだ。特に医療分野では,日本でもがんの領域で「がんゲノム医療」が保険診療としてスタートすることとなり,小児科の先天性代謝異常症もそれに続くべく研究が進められている。
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