特集 ART時代の男性不妊診療─いま泌尿器科医に求められていること
企画にあたって
白石 晃司
1
1山口大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野
pp.201
発行日 2016年3月20日
Published Date 2016/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205556
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1990年代の日本生殖医学会(当時の日本不妊学会)の一般演題のなかには,「不妊治療において男性因子の治療は必要か?」といった主旨の報告が散見されていました.その背景の1つに,体外受精や顕微受精などの生殖補助医療(assisted reproductive technologies : ART)が日常茶飯事に行われるようになり,精子が1つでもあれば妊娠可能であるという認識が婦人科側にあったことが挙げられます.しかし,この20年間でARTの成績に顕著な進歩はなく,晩婚化に伴う卵子の老化も相まって精液所見が不良な男性の精子を用いたARTの成績は極端に悪いことが判明しています.逆に男性不妊治療によりタイミング法や人工授精のみならず,ARTの成績までも改善することが認識されています.最近では婦人科の先生から精索静脈瘤手術の有用性が報告されるまでになりました.全カップルの6組に1組は不妊症で,その半分に男性因子が存在します.患者数は莫大であるため,泌尿器科側の受け入れが十分でないと適切な不妊治療は成り立ちません.
本特集では,男性不妊症患者さんが受診された際に困らないように,初期診療から各病態についての専門的治療まで最新の知見を各エキスパートの先生方にアップデートしていただきました.読者の先生方に今後ご尽力を賜り,生殖医療における泌尿器科医の役割を社会に理解してもらい,1組でも多くのカップルに赤ちゃんを授けられることができれば幸いです.
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