講座
腫瘍と免疫(8)—細胞性の免疫抑制
漆崎 一朗
1
Ichiro Urushizaki
1
1札幌医科大学第四内科
pp.731-737
発行日 1980年8月20日
Published Date 1980/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202997
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はじめに
免疫応答はT細胞,B細胞およびmacrophageなどの細胞の相互作用によつて調節されていると考えられてきている。しかし,その主役はT細胞であり,正の方向に作用するT細胞群すなわちhelper T細胞,amplifier T細胞と負の作用,免疫抑制に働くT細胞すなわちsuppressor T細胞とに分類することができる。とくにsuppressor T細胞の存在は免疫応答系のnetwork説の出現とともに最近注目を集め,体液性免疫応答,細胞性免疫応答を問わず,広範囲の免疫系で証明されてきている1,2)。さらに免疫応答に占める macro-phageの位置,その機能の複雑さが追求されsupp-ressor macrophageの存在も報ぜられてきている3,4)。これらsuppressor cellによる免疫抑制機構の研究分野は多岐にわたり,その進歩は日進月歩の感があり,かつ総説も発表されているところである5)。本稿では腫瘍免疫を中心に動物実験の所見と人癌のそれを分けて記載するが,その方法論の困難性から人癌に関する研究業績は必ずしも多くないことをおことわりしなければならない。
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