講座
腫瘍と免疫(2)—人腫瘍抗原
漆崎 一朗
1
Ichiro Urushizaki
1
1札幌医科大学癌研内科
pp.131-136
発行日 1980年2月20日
Published Date 1980/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202898
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
人の腫瘍細胞は当然正常細胞とは異なつた表現型をもち,その抗原性にも変化があらわれてくる。腫瘍細胞における抗原性の変化には次のような場合があるとされている1,2)。1)正常抗原の減少または欠損antigenic deletion,2)正常抗原の異常増加,3)抗原の拡がりantigenic diversion,4)抗原の先祖帰りantigenic reversion,5)新らしい抗原性の獲得,腫瘍特異抗原tumor specificantigen (TSA)の出現,6)抗原性の変調antigenicmodulationである。これらの抗原変化のうち,腫瘍に対する宿主免疫反応が強く発動するのはTSAであつて,腫瘍細胞の細胞膜に存在し,移植腫瘍の実験によつてのみ検出,同定されるので腫瘍特異移植抗原tumor specific transplantation antigen(TSTA)と呼ばれる。しかし,人癌では腫瘍の移植実験はできないことであるので,抗原の特異性を確認することは必ずしも容易ではない。したがってin vitroに細胞性免疫のassay法により,すなわち,遅延型過敏反応,リンパ球の幼若化現象,マクロファージ遊走阻止試験さらに細胞障害性などの各種試験によつて検出されるが,特異性の検討が重要である。
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.