講座
腫瘍と免疫(5)—体液性免疫,その成立と免疫グロブリン
漆崎 一朗
1
Ichiro Urushizaki
1
1札幌医科大学癌研内科
pp.413-418
発行日 1980年5月20日
Published Date 1980/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202943
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はじめに
免疫グロブリン(Ig)に依存する体液性免疫がB細胞により担われていることは周知のことである。B細胞のBはbone marrowの頭文字に由来する。抗体産生において,その主体は骨髄由来のリンパ球bone marrow derived lymphocyteであり,胸腺由来のリンパ球thymus derived lympho-cyteがその補助作用をすることが明らかにされている。このT細胞も骨髄由来の未熟リンパ球の一部が胸腺で分化したものであるから,由来からだけでB細胞を定義すると混乱をまねくので,抗体産生細胞に分化する系列のリンパ球をB細胞として取扱つている。
最近の免疫化学の著しい進歩に伴いIgの一次構造,遺伝子レベルでの解析,抗体分子の活性構造,抗原・抗体反応の分子論的考察が明確にされてきた。しかし,これらの結果が細胞レベルでのB細胞の分化に関する知見とどのように結びつくものか,さらにどのようにして特異抗体の産生に選択的に導かれるのか未解決の点もすくなくない。
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