講座
腫瘍と免疫(6)—癌患者の免疫機能
漆崎 一朗
1
Ichiro Urushizaki
1
1札幌医科大学第四内科
pp.527-532
発行日 1980年6月20日
Published Date 1980/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202963
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はじめに
癌患者の免疫機能は癌細胞に特異的な応答性をみる特異的免疫能と,癌に限らずに個体の免疫応答能をみる非特異的免疫能にわけて考えられている。さらにそれぞれの免疫機能は細胞性および体液性の2つの免疫能に分けて測定されている。抗腫瘍性という立場からはその主役を演じているのが細胞性免疫能であり,とくに癌特異抗原に対応した免疫力,生体のリンパ系細胞による腫瘍細胞傷害が中心となつている。しかし,人癌を対象とする限りでは,癌特異抗原の実証もすべての癌に十分ではなく,また用いられる細胞性免疫の特異的検索法も限界があり必ずしも満足できるものではない。したがつて多くの場合には非特異的な方法が用いられている。しかし,非特異的な免疫能が果してどれだけ抗腫瘍性免疫と関係しているかの点については疑問が多い。癌が中年以降に発生しやすいことは老化,加齢に伴う免疫能の異常と無関係ではない。また癌化学療法,放射線療法は宿主に医原性要因による免疫抑制を促進させるであろうし,癌患者が担癌により悪液質におちいることも知られている。これら二次的免疫抑制が加算され,非特異的免疫不全状態をまねき,これが癌の特異的免疫能にも関与するといえるわけである。現在,癌患者の免疫能の測定に用いられている方法は要約すると第1表のごとくである。
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