講座
腫瘍と免疫(10)—特異的免疫療法の現状
漆崎 一朗
1
Ichiro Urushizaki
1
1札幌医科大学第四内科
pp.945-950
発行日 1980年10月20日
Published Date 1980/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203029
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はじめに
癌の免疫療法が特異的免疫によらなければならないことはいうまでもないが,人癌の特異抗原についてはすべての腫瘍に証明されているわけでなく,その抗原性の微弱性,不安定性も指摘されているところである1)。したがつて自己の体内に増殖を許している癌細胞を抗原として用いることについては,癌細胞の増殖を許す状態にある担癌宿主が,その癌細胞によつてさらに強度の免疫能の増強をもたらすや否やについて疑問視される。特異免疫には正ばかりでなく負の免疫の成立も考慮されるからである2)。さらに担癌による細胞性ならびに体液性の免疫抑制機構が存在する3)。
癌の特異的免疫療法の意図するところは,まず何らかの方法により腫瘍特異抗原の強化を図つて免疫療法に適用する試みであり,その場合,手術により腫瘍を除去するか,化学療法により寛解がもたらされた宿主に対して,つまり腫瘍・宿主関係が改善された時点での特異的免疫療法の効果を期待することであろう。
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