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講座
腫瘍と免疫(3)—胎児性癌抗原
Ichiroo Urushizaki
漆崎 一朗
1
Ichiroo Urushizaki
1
1札幌医科大学癌研内科
pp.227-232
発行日 1980年3月20日
Published Date 1980/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202916
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はじめに
最近,癌の免疫学的診断法が進歩し,癌組織およびその抽出物に対する異種抗血清を作製して検出される抗原が報ぜられてきている。癌に存在し正常組織に認められない抗原物質であるが,詳細に検討すると正常組織にも微量に含まれている可能性があり,癌には多量に存在するという量的な差が大であるにすぎないか,また胎児組織の通常成分であるものである。これら癌に特徴的な抗原成分は腫瘍関連抗原tumor associated antigenと呼ばれ,癌の免疫学的診断法に広く応用されていることは周知のごとくである。
このうちの多くは胎児組織の通常成分であつて胎児性癌抗原Onco-fetal antigenとよばれている。代表的なものとしてα—fetoprotein (AFP),carcinoembryonic antigen (CEA),isoferritinおよびr-fetoproteinなどをあげることができる。元来胎児性蛋白は胎生期においてのみ多量に産生されるが,生後まもなく産生がみられなくなり,正常成人ではほとんど検出されない胎児特有の蛋白成分ということができよう。したがつて,胎児性癌抗原とは出生後はrepressされて活動していなかつたsilent geneが癌化に伴つて再び活性化しderepressされて,癌細胞で産生される胎児性蛋白であると考えられている。
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