Japanese
English
特集 尿路性器癌の化学療法
睾丸悪性腫瘍の化学療法
Chemotherapy of Malignant Testicular Tumor
酒徳 治三郎
1
Jisaburo Sakatoku
1
1山口大学医学部泌尿器科学教室
1Department of urology, Yamaguchi University school of Medicine
pp.155-160
発行日 1977年2月20日
Published Date 1977/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202304
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
睾丸腫瘍の90%以上が組織発生上生殖細胞由来germ cell originであつて,多彩な組織型を示す。すなわち生殖細胞本来の性状である造精機構を背景にした様式で癌化したものがseminomaであり,他方,生殖細胞としての多形成能totipoten-tialityを示す個体発生の方向性をもつて腫瘍化したものが胎性癌,奇形癌,成熟奇形腫,絨毛上皮腫などである1)。これらの各腫瘍型の中で,成熟奇形腫のみが良性で,他のすべての腫瘍は悪性である。
睾丸腫瘍の発生頻度は決して高いとはいえない。しかしながら,他の悪性腫瘍が一般にいわゆる癌年齢と呼ばれる高年齢層に多いのに対し,睾丸腫瘍は20歳台,30歳台の青壮年層に好発するのが特徴である。Wittesら2)によると,睾丸腫瘍は米国で診断される悪性腫瘍の約1%にすぎないが,15〜34歳台の腫瘍としては第4位に位置している。またTwitoら3)によると,睾丸腫瘍は15〜40歳男子に発生する悪性腫瘍では最も多いものの一つであり,その発病率は男子人口10万人あたり年間3.1の割合であるという。さらに彼らによると25〜35歳では全癌死の11.4%を睾丸腫瘍が占めるという。わが国における頻度も同様の傾向を有するが,ただ幼小児睾丸腫瘍は外国に比べて本邦では好発する。しかしながら,伊勢ら4)によれば日本人15歳以下の悪性腫瘍の1.4%を占めるにすぎず,やはり稀な腫瘍の一つといえよう。
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.