--------------------
編集後記
大家 基嗣
pp.894
発行日 2014年10月20日
Published Date 2014/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200025
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
深夜に帰宅し,疲れた体をソファに委ね,無意識にリモコンでテレビの電源をつけると,着物の女性が酔って床に転がるシーンでした。女優に見覚えがあり,フラフラと体が揺れる様もどこかで見たことがある気がしました。朝のNHK連ドラを1週間分流す番組で,どうも『花子とアン』らしい。主演の吉高由里子さんの酩酊の演技からある舞台挨拶のシーンを思い出しました。
2013年2月の編集後記で紹介した映画『転々』は2007年の製作で,まだ吉高由里子さんが無名の頃です。脇役で出演しているのですが,その舞台挨拶で彼女はずっと体をゆすってひとときたりともじっとしていませんでした。おかしい。多動症? それ以来ずっと気になっている女優さんです。彼女を一気にスターダムに押し上げたのは主演をした2008年公開の『蛇にピアス』です。とんがっているのにけだるくて,つまらなさそうにしている表情と,明るい笑い顔とのギャップが激しい。高良健吾さんが演じる恋人のスプリットタンに魅せられ,井浦新さんが演じる彫り師の店を訪ねます。19歳の女性が刺青とピアスに惹かれていくのに理由はなく,理解は不要です。刺青とピアスに伴う痛みはむしろ歓迎され,元に戻ることのできない肉体の改造は美しい自然な行いに映りました。当時72歳で演劇界の巨匠である蜷川幸雄氏が監督として撮った映画です。
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.