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月遅れのお盆を前にして,机まわりを整理しています。古新聞(本年2月18日付)に,米アラスカ大などの研究チームにより米科学雑誌サイエンスに,「冬眠クマの生態解明」が発表されたという記事をみつけました。この研究チームはアラスカ州当局に捕獲されたアメリカクログマ5頭に心拍計などを埋め込み,赤外線カメラや酸素計測器を備えた巣穴で冬眠させた結果,心拍数は通常の55回から最少9回まで減少し,心拍の間隔は20秒にもなったとのことです。また,5~6度の体温低下で体内基礎代謝は25%低下しました。クマの通常の体温は37~38℃ですが,冬眠中は30~36℃の間を,数日周期で行き来するサイクルが存在することか新たに発見されました。このクマが代謝を調節するメカニズムは臨床応用が可能です。すなわち,重症者を病院に輸送する際に,冬眠状態にできれば救命率の向上に役立つわけで,そのメカニズムの早期の解明が期待されるると記事は締め括られています。クマ大好き人間である小生にとりましては,夢のような研究です。猛暑対策として昼寝をしたくても,節電のためクーラーの使用を控えざるを得ない最近の状況下では,「シロクマではなくクロクマの話か」ということで,暑さをさらに倍増させる不快な話題と多くの読者の皆さんからお叱りを受けるかもしれませんが,この編集後記の掲載される頃は,「月の輪熊・クロクマ」は冬眠に入る時期となります。よって,ご容赦いただけるのではないかと思います。すみません。
さて,今月号の総説は,大阪医科大学・東 冶人先生らの,「浸潤性膀胱癌に対する化学療法,および,新規膀胱温存療法“OMC-Regimen”の治療効果」です。筆者らが15年もの歳月をかけて開発された「血液透析併用,バルーン塞栓動脈内抗がん剤投与によるシスプラチン投与と放射線を併用する集学的治療による膀胱温存療法」の素晴らしい成績が報告されています。読者の皆様も感銘を受けるものと確信します。手術手技は,大阪府立成人病センター・垣本健一先生および宮城県立がんセンター・栃木達夫先生の「根治的膀胱全摘除術(開腹術)女性患者の場合」の指導的助手からみた手術のポイントで,要点を明確に述べられています。セミナー「基礎研究は面白い」は,鹿児島大学・榎田英樹先生の体験です。筆者の米国留学での経験や基礎研究に対する考え方は,若い読者の参考になるものと思います。さらに,原著1編,症例3編,小さな工夫1編に加え交見室が1編と,いずれも力作です。加えて,新宿石川病院の三木 誠先生よる「珍しい外陰部疾患」は「尿道損傷」の貴重な症例を執筆していただきました。
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