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編集後記
藤岡 知昭
pp.96
発行日 2009年1月20日
Published Date 2009/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101646
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2008年,本邦の泌尿器科腫瘍領域の臨床における最大の話題の1つは,腎癌の治療にソラフェニブとスニチニブという分子標的治療薬が登場したことである。これは,癌細胞の特異的な蛋白質などを標的とした新たな治療薬であり,従来のIFN-αおよびIL-2を中心としたサイトカイン療法が大きく変革するものと考えられている。今月号の綜説は,秋田大学・湯浅健先生らの「腎細胞癌に対する分子標的治療の展開」で,分子標的治療薬の抗腫瘍作用機序から代表的な臨床試験,治療効果の予測,さらには現在進行中の臨床試験まで簡潔に概説しており,新年号の巻頭の綜説としてまさに時宜を得たものである。分子標的治療は,忍容性,近接効果では高く評価されるものの,寛解例の少ないことや多様な副作用が予測されるなどの問題点を指摘している。分子標的治療薬に関する治験を整理できる論文である。
手術手技「小児泌尿器科手術」は,大阪市立総合医療センター 坂本亘先生,神奈川県立こども医療センター 山崎雄一郎先生および岡山医療センター 後藤隆文先生による「Wilms腫瘍に対する手術」3編である。 Wilmsは,小児泌尿器科領域において代表的な腎腫瘍であるが,泌尿器科医一般にとっては馴染みの薄い疾患・手術と思われる。各筆者の貴重な経験を実感できる読みごたえのある論文である。
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