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編集後記
藤岡 知昭
pp.464
発行日 2007年5月20日
Published Date 2007/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101233
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東海道新幹線で移動中,『ひとときMARCH 2007』の「人に夢あり」で,山野井泰史氏を紹介する頁を見つけました。彼は,単独・酸素なしで,ヒマラヤなどの高峰の極めて困難な登攀ルートを切り拓いてきた著名な登山家です。彼の登攀に関する姿勢は極めて精鋭的・壮烈で,妥協を許しません。2002年,ご夫妻でネパールと中国の国境にそびえ立つキャンチユン・カン(7,952m)の氷壁に挑戦し,みごと彼は単独登頂に成功しました。下山途中,ご夫妻は雪崩に遭遇しましたが,何とか生還できた強運の持ち主です。しかし,その代償は大きく,クライマーの命といえる左手の小指と薬指,右手の小指,薬指および中指,さらに右足のすべての指を凍傷で失っています。それでも岩壁・氷壁の登攀を挑み続ける情熱を失うことはありませんでした。
インタビューとして掲載されていた「明日は登れるからと準備をする。準備をしているときが一番怖いですよ。登りたい気持ちより恐怖が前面に出てくる。明日も天気が悪ければ行かなくてもすむと思いながら準備をするわけ」,「でも山と向かい合ったら,生きてあそこから戻るにはどうしたらいいかじっと眺める」というところが妙に印象に残りました。登りたいという気持ちと,厳しい山に挑戦することによる生命を失う恐怖との葛藤を推察することができます。なぜか,難しい手術・可能であれば他の術者に代わってもらいたい手術に直面した心境に近いものを感じました。
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