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軟性膀胱鏡の灌流は通常生理食塩水を用いて行っているが,流量が少なく血尿が強い場合は視野が悪くなり十分な情報が得られにくい1)。用手膀胱洗浄に切り替えて凝血塊を除去したり,血尿の程度がおちついて膀胱鏡を行ったりすることがある。しかしながら,血尿がおちついてからでは左右どちらの上部尿路からの出血だったか確認ができないことがある。右腎動静脈奇形からの高度出血症例に対して,部位診断のために軟性膀胱鏡を施行した際に空気を貯留することで良好な視野となり部位診断を行うことができた。高度出血時に膀胱内に空気を貯留することは軟性膀胱鏡での視野を確保するのに有用な可能性があるため,今回経験した症例も交えて報告することとした。
症例は21歳女性で,突然の肉眼的血尿を主訴に前医を受診し,右腎動静脈奇形が疑われ加療目的で紹介入院となっていた。紹介後,造影CTやドップラーエコー,血管造影を施行したが右腎動静脈奇形を疑うような所見はなく(図1),その他尿路に出血をきたす原因もみつからずに退院予定となっていた(膀胱鏡,尿管鏡などの検査は学校の休みを利用して行う予定としていた)。ところが,退院当日に高度な血尿をきたしたので,出血部位を確認するため軟性膀胱鏡を施行した。しかしながら,1時間でヘモグロビン2g/dlの低下をきたすような高度な血尿であったため,用手膀胱洗浄を行っても追いつかず,当然のことながら生理食塩水で灌流して軟性膀胱鏡を行っても膀胱内の視界は不良で,出血部位の同定はできなかった。そこで,膀胱内を空虚にした後に膀胱内に150~200mlほどの空気を入れ膀胱を膨らますと,視界は良好となり,右尿管口から血尿が出ているのが確認できた(図2)。液体は空気の中に入れず,空気で膀胱内を満たすことで液体が膀胱内に広がるのを防ぎ,視野を確保できたと考えられた。
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