書評
「プロメテウス解剖学アトラス―頸部/胸部/腹部・骨盤部」―坂井建雄,大谷 修 監訳
佐々木 克典
1
1信州大学・組織発生学
pp.89
発行日 2009年1月20日
Published Date 2009/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101645
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解剖学書の生命は挿入された図にある。図を1枚見ただけで,どの解剖学書かすぐわかるほど,風雪に耐えた解剖学書の図は個性的である。これまでさまざまな意匠の図が多数描かれており,「これ以上新しい図が登場することはないだろう」と思っていても,『プロメテウス解剖学アトラス』の図のように,私どもの想像を超えたさらに衝撃的な図が生まれてくるところにこの領域の面白さがある。
本書の図の特徴は,透明感である。ギリシャ神話に登場する女神や妖精が透けた衣類を身につけ,舞うようなイメージの図が数多く挿入されている。この透かしの技法は日本の芸術にも時折みられるが,ヨーロッパが得意とするものであり,カメオ職人が,自分が彫った妖精をみせながら,透けている状態を掘り出す難しさを,熱を込めて語ってくれたことを思い出す。この技法は1枚の図の中で,お互いの臓器の関係,特に裏側にある血管との関係を表現するために極めて有効に使われており,その描き方はまさに芸術である。
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