交見室
Fitz-Hugh-Curtis症候群と性器クラミジア感染症,どちらも知っていますか?
安藤 忠助
1
1大分県厚生連鶴見病院腎臓外科・泌尿器科
pp.86
発行日 2009年1月20日
Published Date 2009/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101643
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性器クラミジア感染症は主に男性の尿道炎として泌尿器科で扱うことの多い疾患であるが,女性患者を扱うことは少ないように思える。これは女性性器のクラミジア感染症の半数以上がまったく症状を感じないともいわれており,また婦人科で扱うことが多いからだと思われる。しかし,女性の性器クラミジア感染症は容易に腹腔内を浸透し,骨盤内炎症性疾患を引き起こし,上腹部にも感染が拡がるとFitz-Hugh-Curtis症候群(以下,FHCS)という肝周囲炎を合併した急性腹症を発症する。近年の性感染症の蔓延に伴い,FHCSは急性腹症の4~5.8%を占めるといわれており1,2),決して稀な疾患ではなく急性腹症の1疾患として注目されている。
当院においても,泌尿器科を初診したFHCSを経験したので紹介する。患者は19歳の女性,下腹部痛を主訴に膀胱炎と自己判断して泌尿器科を初診した。右季肋部を最強点として腹部全体に圧痛と反跳痛を認めたが,血液生化学,腹部CTおよびエコーに特記すべきことはなかった。以上よりFHCSを考え,入院のうえでテトラサイクリンによる点滴加療で治癒した。腟頸管粘液のPCRおよび血清抗体価によりFHCS症候群と確定した。確定診断および治癒後に,本人より性器クラミジア感染により流産の経験があるが無治療であることが確認され,その後の治療を産婦人科に依頼した。
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