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編集後記
藤岡 知昭
pp.352
発行日 2008年4月20日
Published Date 2008/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101496
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衝撃的な手術書を研修医の机でみつけました。それは,医学書院より出版された,加藤晴朗著『イラストレイテッド泌尿器科手術 図脳で覚える術式とチェックポイント』です。以前から,小川秋實著『膀胱全摘除と尿路変向・再建のテクニック』の改訂版(?)といえるような手術書を執筆したいと考えていましたので,加藤先生に「やられた!」というのが小生の正直な気持ちでした。
加藤先生は,信州大学の講師を務められている,まさに旬の中堅泌尿器科外科医です。加藤先生は,手術のイラストを描くためには,視覚的な観察力に加え,術式や外科解剖を理解した上での問題意識や統合力の重要性を強調するために,独自に【図脳】という造語を用いています。「手術は,1つ1つの手技(図)の連続よりなり,その手技を合理的な順序に従って完遂すれば,手術は滞りなく終了する」という記述は,真髄をついた表現と共感できます。特に小生が「こだわり」をもっている膀胱全摘除術の項では,典型的術式に加え,子宮摘除の症例,膀胱瘻から発生した膀胱癌症例,bivalved cystectomyなどの難解な術式を,膀胱再建術などで世界的に著名なAbol-Enein教授のところへ留学した体験をもとに作成した多くのイラスト構成により,明快に解説されています。「手術の習得は,ある程度の段階にきたら思い切って最高の手術を見て学ぶのも1つの方法」いう著者の主張は,同様な体験をもつ小生も同感であり,若い読者の皆様に伝えたい貴重なメッセージであると思います。『イラストレイテッド泌尿器科手術 図脳で覚える術式とチェックポイント』は,泌尿器科研修医の皆様に推奨したい名著であると断言いたします。
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