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編集後記
藤岡 知昭
pp.640
発行日 2008年7月20日
Published Date 2008/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101547
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昨年は,奥山においてドングリやブナを始めとする木の実の不作で,人里でのクマの出没のニュースが全国からあいつぎました。昔からクマと共存してきた地域では,クマたちが夜間にこっそり山郷の栗や柿を失敬するのを容認していたため,人間とクマとの間に大きな問題や争いが発生しませんでした。しかし,近年クマの生態を知らない地域では,臆病なクマを追い回すことにより“人身事故”が発生しています。また,クマの行動学を無視した行政により,餌となる「柿や栗の木の伐採」や「柿や栗の実の廃棄」という住民指導が行われた結果として,奥山から出てきたクマを住民の安全のために駆除・射殺するという方策が必要になりました。
最近,エコロジーが注目されていますが,興味ある事例として,群馬県沼田市の有志により行われている「クマ止め森林活動」を知りました。多数のコナラの植林により,奥山と人里の間にクマの餌取り場としての森林を整備することで,クマと住民との共存・安全を確保するとともに,動物の棲む豊かな森林を次世代に残すという夢のある活動です。
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