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本邦の進行腎癌に対する標準治療は, 従来,IFN-αやIL-2などのサイトカイン療法でしたが,2008年以降,臨床現場にあいつぐ分子標的薬が登場したことにより,大きく変貌しています。今月号では,横浜市立大・矢尾正祐先生に特集「分子標的薬時代開幕5年目を迎えた進行腎癌の治療戦略の現状と展望」の企画を執筆者の選択を含めてお願いしました。本特集では腎癌の病理,患者のリスク分類,分子標的薬とサイトカイン療法との共存や手術療法への応用,分子標的薬の選択順位,画像検査・バイオマーカー,さらには次世代分子標的薬とよく練られた構成になっています。
最初に高知赤十字病院病理診断部・長嶋洋治先生らに分子標的薬治療との関係を視野に入れて「腎癌取扱い規約(第4版)」における変更点を概説し,今後の検討課題を挙げていただきました。北海道大学・篠原信雄先生には,日本人にMSKCC分類やHengのリスク分類を適応した場合の問題点の指摘とともに,独自に自施設の症例解析により開発したJMRC分類を紹介することで薬剤選択の指標となる患者リスク評価について解説していただきました。独協医科大学・別納弘法,釜井隆男両先生には,IFN-αの交替療法,IFN-α+IL-2とIFN-α+sorafenibの併用療法のサイトカインを生かす治療戦略の可能性について,東京女子医大の近藤恒徳先生には,分子標的薬と手術との併用戦略の有効性と限界を,さらに近畿大学・野澤昌弘先生には,分子標的薬の逐次交代療法と不応後の再投与の有効性と症例選択についてそれぞれ解説していただきました。また,横浜市立大学・中井川昇先生らには,FDG PET/CT画像診断が分子標的薬の効果判定や効果予測に有用であることを紹介してもらいました。がん研有明病院・湯浅健先生らにはスニチニブを中心に,効果,副作用を予測する臨床因子,遺伝子因子,循環蛋白質・細胞について。NCIの蓮見壽史先生らには,BHD症候群の原因遺伝子であるFLCNの機能や細胞内代謝経路の変化の解析は嫌色素性腎癌やオンコサイトーマの新規診断方法や治療薬開発に役立つという興味深い知見を解説していただきました。さらに,慶應義塾大学・水野隆一,大家基嗣両先生には,パゾパニブ,アキシチニブ,ドビチニブ,チボザニブの次世代の薬物療法の解説と,分子標的薬は常に進歩しており,最新の治験を取り入れる重要性を指摘していただきました。
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