特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション
8.そのほか
【遊走腎】
92.遊走腎を呈する患者です。対処と処方について教えてください。
岩村 正嗣
1
1北里大学医学部泌尿器科
pp.320-321
発行日 2008年4月5日
Published Date 2008/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101475
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1 診療の概要
遊走腎(腎下垂)は,腎の支持組織が脆弱なために,立位の際に腎が自重で1.5椎体以上,または5cm以上下降する状態をいう。腎周囲脂肪織が菲薄な瘦せた女性の右側に多くみられ,ほとんどは無症候性であるが20~30%に側腹部痛や背部痛を認め,時に嘔気や嘔吐などの消化器症状を伴う。また,無症候性であっても顕微鏡的血尿や蛋白尿など尿所見に異常を認めることもある。遊走腎に伴う臨床症状は腎の下垂で腎動静脈が過度に牽引されることによる血流不全や,尿管の屈曲による一過性の腎盂内圧亢進が原因と考えられ,立位歩行や荷重で増悪し臥位で消失することが特徴である。
診断には排泄性尿路造影を行い,立位での腎の位置が臥位に比較して1.5椎体,あるいは5cm以上下降していることを確認する。しかし,単に腎の下垂を確認するだけでは臨床症状が遊走腎に由来するとする根拠には乏しく,診断には体位による血尿や蛋白尿,腎血流動態の変化を客観的に証明することが重要である。
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